唐紅はこう読みました
[月の終わりに]
2003年 4月 30日(水) 20時 2分
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皆様、お久しぶりです。
この前書き込みあったじゃないかってあれは丸々私用にて感想など物すのも久方ぶりかと思わなくもないというか実際一年以上書いていないのでって自分でも最後に飲み会でなく関わったのっていつだろうなどと記憶も遠く彼方に消え去っておりましてやはりお久しぶりです。
年度が改まって仕事が進んでいない割にはのんびりと忙しく働いておりますが、テーマが爆発とあれば、ばけ屋の端くれとして作品提出はもとより感想もきっちり書かなくてはなりません。いえ、作品についてはむにゃむにゃ……。
他の方の感想を読んでいないので、重複についてはご容赦ください。
大変申し訳ないのですが、残念なことに私には詩才のかけらも無いため、「ザ・ロード」「春の息吹」「vital. -blast wave-」についてのコメントは控えさせていただきます。
「大発生」
テーマ「爆発」との関連性の希薄さについては私は全く気にしないのですが(とりあえずクモの爆発的増加がテーマではありませんね?)、まばらに生えた木々の間を通っているのに巣を張ったクモがうようよ(表現の不統一感)とか、血を吸うクモって常食は何なんだろう(通常のクモは哺乳類を捕食しないので、でかくなってもしないのではないかと)とか(架空の出来事を扱うにしても現実との整合性はどうなっているか)、疑問点はいっぱいですが、それはそのまま認めたとしても、結局のところ何をテーマとした作品なのか不明でした。身勝手な直輸入品をきっかけとした自然破壊への警鐘とする作品であるならば、ミステリー風の味付けになってしまう最終段落は、焦点を陰謀側に持っていってしまうという意味で全く効果的ではないですし、薬害等をモチーフとしたミステリーであるならば、書かれているのは導入パート、つまり謎の提示だけなわけで、まだ作品として成立していません。仮に兄が主人公を網に引っ掛けるためにクモを用意したとしても、引っ掛かったのは偶然以外の何物でもなさそうですが、それを予知して主人公をだまくらかす用意をしているというのもなぜなのでしょう(毎日毎日用意はしていて、ようやくのことで今日たまたま引っ掛かってくれたという解釈も不可能ではないにせよ)。設定が不可解かつ登場人物の行動、動機もはっきりしないため、どのように読ませたいのか、作者の意図を汲むことができませんでした。
「彼の心、煉獄の中で」
私と同世代かそれより若い方と思われるのに、まだこういったネタで書ける方がいるのですね(揶揄ではありません)。前半部分は左の思想に対する揶揄の香りも漂いますが。こういう方々にとってテレビは娯楽を兼ねていないんじゃないかとか、神がいないので伝統的には「天誅」じゃなくて「鉄槌」の方が正統派ではないかとか、「煉獄」も共産主義者の言葉ではないだろうとか、「首相とその馬鹿ども」では意味を取らせるのに言葉が足らないとかいうあたりは大したことではないのでいいです。一応資本主義(主人公にとっては帝国主義(?))/共産主義(経済形態)と民主制/共和制/立憲君主制/王制……etc.(政治形態)ははっきり区別した方がよろしかろうというのも取るに足りません(当然著者はご存知でしょうし)。小学生は「生徒」でなく「児童」であるのも瑣末なことです。いや、重箱の隅ばかりですね。閑話休題。話の内容は理解できます。構造的には、反社会的行為を行う人にも、子供を見たときにふとわれに立ち返る瞬間があるということを描いてやるせなさを表現しようというところではないかと感じました。前半は共産思想に対する揶揄を含みつつ、パロディ化しているように思えるのですが、どうでしょう(共産主義を信奉していらしたら失礼ですが)。この点は対象年齢がこらむランドの読者に合っているかどうかは少々疑問です。あさま山荘関連のノンフィクション書籍あるいは「テロリストのパラソル」などのその手の小説を好んで読むような人ならば問題無いとは思いますが、背景の理解を求めるには苦しい設定かと。その点は「約束」の方がまだ最近(大元はイスラエル問題の方が古いかも。共産革命と見ればそちらのほうが古いか?ディアスポラまで遡るとまた厄介ですけれど)な分有利でしょうか。作者さんは主人公への共感は意図していないとは思うのですが、単にテロリストの自業自得を読み取ればいいという作品でもないでしょうし、読者に預けた下駄が重すぎるかなというのが印象です(他の方々が共感を持って読めたというなら失礼しました)。そして背景を理解したとしても、私に関して言えば、テロリストは最後に情けが現れようとテロリストでしかないため、自業自得以外の感情は湧きあがってこないのです。
「約束」
テロリストの心の揺れ第二弾(「彼の心、煉獄の中で」とどっちが二番目かは単に並んでいる順番ですが)ですね。学校の備品を盗んで放校になるのは仕方がないんじゃとか日本的感覚で考えてみるのも益無しとしてどうでもよいです。イスラム教徒の飲酒のシーンが出てくるのは、「飲酒する程度にさして厳格なイスラム教徒ではない市井の民でも、テロを選択せざるを得ない状況がある」ことを訴えるための伏線でしょうか。それ以外にも我々にも想像できる日常を表現することに割合力を注いでいるように見受けられます。この作品で作者さんは、「日本人には目の届きにくい所で、こんな悲劇に見舞われている場所があるのだ」ということをただただ純粋に訴えたいのかと思います。そして政治談議にまで踏み込むつもりではないのだろうとも思います。しかしながら、私のような人間にとっては、情に訴える政治的プロパガンダにも見えますし、そのように捉えてしまうと報道で行われるような「政治活動をこれまで行っていなかった普通の市民によるテロ」といった画一的なくくりの範囲を超えるものではないように思います。そしてそういった報道スタンスは、職業テロリストのプロパガンダに利用されているのも事実かと思います。昨今のイスラエルの姿勢が警察活動を超えた内容であり、適切な方法ではないと思うことも同意はしますが、とはいえインティファーダによる投石でも人は死にますし、なおさらテロに対してどんな共感も与えるわけにはいかないというのが私の立場です。
「私は名探偵」
こらむランド作品を拝見することすら久しぶりなので、最近はどのような内容が受けているのか知らないのですが、以前から見受けられる少女漫画風味も、安定感という意味では良いものです。内容的には子供の微笑ましいいたずらでしょうか。推理が必要な局面があるわけではないので、探偵物というよりはラブコメの一場面という解釈でよろしかろうと思います。全般的なトーンに緊迫感は無いため、主人公が学校爆破をどれほど信じて行動しているのかがよくわからないのと(爆弾を仕掛けたやつがいると思っている割には行動がずさんだが、いたずらの延長程度に思っているにしては慌てすぎ)、名探偵振りを示す記述が自称でしかなくて今回の行動に現れていないのが疵瑕と言えば疵瑕でしょうか。小学生なりの知恵の比べあいと言っていいシーンが無いですよね。その辺の設定を生かす記述があるとよいのではないかと。記述の点では何がエイプリルフールだったのか良くわかりませんでした。「爆弾を仕掛けた」という嘘に引っかかったということでしょうか。本当の爆弾ではないにせよ、火薬仕掛けてありますが。あるいは「ワトソンが怪盗ジョーカーを騙った」嘘に騙されたということでしょうか。怪盗ジョーカーさんが明白に他にいるなら嘘ですが、ワトソン=怪盗ジョーカーでも嘘ではなかろうかと。まあ、この辺りも些細なことでしょうね。
「避けるべき爆発」
文章的に不可は無いのですが、面白いかと言われると疑問が残ります。最初の段落では、なぜそれほどまでに様々な種類のスポーツ評論家として成功できたのか不明なため、主人公の特徴を掴みづらいです。スポーツ評論の重鎮なのか、自己主張が強いだけの出たがりなのか、極端な性格付けをしてしまっても良かったかと。また、キャスターとのやり取りが無いままでハードル走に例えられる疾走感を出すのは難しいので、「これは見事な切り抜けだ」という感想に至りません。スポーツにおける緊張の効用に話を振っておいてから緊張により尿意をもよおすという構造は工夫されていると思います。しかし尿意の段に至って、切れ者風を印象付けた主人公に唐突かつ恥となりうる間の抜けた状況を用意して前段との落差を付け、苦笑なりといった感情に持っていこうという話だと思うのですが、しゃちほこばった文章が却ってコミカルな印象を与えるせいか(これは作者さんの意図した通りだと思います)、落差を感じるよりは全編通して抜けた感じがしました。あるいは全編通して間抜けな男の話と読めばよかったのでしょうか。それでも「愛すべき間抜けな男」には成りきれていないように思いました。
「おつむへんてこ、へんてこおつむ」
どう読んだら良いのか判断に困りました。ものさしを変えてみて改めて気が付くものを提示すると高らかに宣言しているように見受けられるのですが、価値観の逆転を起こさせるような転換ではなくて、あまり知られていないであろう滋賀の特徴を並べ立てた知識の羅列に見えます。もちろん(全てが本当かどうかについては検証していないものの)私の知らない滋賀の特徴を知ることができるという点で博物学的価値はあると思うのですが、他人の価値観を揺さぶるような創造的価値があるかというと疑問です。単なるお笑いと読んでしまうには冗長に過ぎるかと思いますし、テンポはともかく固有名詞の列挙といった節は一つ一つ追う気にはなれません。位置付けとしては自虐的な滋賀県賛歌によって読者の苦笑と共に親近感を誘うのを目的としているものと読んだのですが、感情的には「困惑」というのが正直な感想です。