春の息吹


 しだいに暖かくなってきた陽の光に誘われて、春の息吹がつぎつぎと爆発していく。そんな花たちを横目に見ながら、じっとまどろんでいる僕たちは若葉。僕たちが息吹くころには、季節は初夏と呼ばれる。
 今年の冬は暖かだったから、春もまだ浅い時期なのについついゆるんでしまったつぼみたち。でも早すぎるよ。まだまだ弱すぎる陽の光に気づかないの。
 寒の戻り。咲き初めた姫君たちの上にも容赦なく降り注ぐ白雪。淡雪をまとって、まるで天使のよう。とても気高く美しい。けど、その実寒さに打ち震えているのが分かってしまう。あぁ、そのか弱い体で。
 翌日はお天道様が微笑んで、白い装いはふわぁ、と消えてしまう。陽の光に透けるような笑顔が天女のよう。
 おぼろ月夜に露を浴びた姫たちはとてもなまめかしい。水もしたたるような、とはこのことだろうか。
 彼女たちはいくつもの思い出を僕らに残して、春風とともにさぁ、と散っていってしまう。残り香をすら吹き消していく、こころない風神。
 やがて亡骸は僕たちの根元に舞い落ち、土に帰る。あなたを糧として、来年はもっともっときれいなあなたを産んであげる。そしていつか僕たちもあなた達と同じ土に帰るよ。決して出会うことのないあなたにしてあげられることはそれだけだから。